Blog - About Cinematic 2014. 06. 11 12:06

もう既に聞いてくれた方も多いかと思いますが、今回の『Cinematic』というアルバムは架空のサウンドトラックをテーマに作り上げたアルバムです。より『Cinematic』を楽しんでもらう為、そしてこれから月末にある『Cinematic』tourをより楽しんでもらう為に“このアルバムを何故作ったのか?”といった事や楽曲の解説を何日間かかけて書いていきたいなと思います。まずは3月の東京のLiveの際販売したプログラムから少し抜粋しまして改めてこの『Cinematic』について触れたいと思います。

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Jazztronikを始めたのはもうかれこれ15、6年前になります。このJazztronikというプロジェクトのコンセプトは”自分の好きな音楽を全部混ぜ合わせたら面白い音楽が出来るのでは”というところから始まっています。僕が学生だった1990年代終盤というのは音楽文化に限らず様々なカルチャーが刺激的で面白い時代だったのではないかなと思っています。ちょうど僕も10代終わりから20代前半という様々な事に影響を受ける年齢だったという事も重なっているかもしれませんが。あちこちに個性あるCD/レコードショップがあり単館系映画館ではアート色の濃い映画上映され、もちろんCLUBやLive house等もとても盛り上がっていて、ちょっとしたお店に行けばオシャレでカッコ良いフライヤーやフリーペーパーが数多く並んでいるような時代でした。今の時代の様にインターネットがまだ普及していない時代だったので何か情報を得るには自らそこに飛び込まないと情報を得られない時代でした。僕はそういった所に足繁く通ったいわゆるわかりやすい芸術系学校の学生でした。どちらかと言うとダンスミュージックやDJというイメージの方が色濃く出た感のある僕ですが、、もちろんそういったものは今も昔も大好きな事は間違いないのですが、、実は高校の時から大学卒業まで学んでいたのはクラシック〜現代音楽と呼ばれるジャンルのアカデミックな音楽の作曲でした。

ピアノを弾く事はもちろんですが、学問として出来上がっている作曲に関係した様々な技法や知識をひたすら学んで行く日々でした。なので学生時代はオーケストラの曲だったり、ピアノ5重奏だったり、その他の楽器の為の曲だったり、ポップスやダンスミュージックといったものとはちょっと違った音楽を昼間は作っていました。でも、毎晩の様にCLUBに遊びに行くといったハチャメチャですが音楽漬けでとても充実した学生時代を過ごしていました。では何故僕がそういったいわゆる作曲の勉強をそんなに若い時からしようと思ったかと言うとそこに今回の『Cinematic』に繋がる“映画音楽”と言うキーワードが出て来るのです。

元々映画が大好きだったので小さい頃からよく連れて行ってもらっていました。僕の記憶に残る映画館で観た人生最初の映画と言うのは『タイタンの戦い』という映画です。これは今でもカルト的な人気を誇っている作品ですが、当時小学校にあがったかどうか位の僕にはなんだか恐い映画という印象が強かったです。現在ではとても好きな映画の1つですが。実際になんだか心動かされたなと感じた映画はその次に観た『E.T.』が最初ではないかなと思います。今更この映画の説明は不要だと思いますが内容はもちろん音楽も素晴らしい作品です。そんなこんなで色々と映画を観ていくうちに、どうやったらこういう音楽作れるのかな?と中学生の終わり頃思い始めたのがきっかけでした。『ニューシネマパラダイス』の音楽が良いなと思ったり『ラストエンペラー』の音楽が映画の内容は理解していないのにカッコ良いなと思ったり、はたまた『ゴーストバスターズ』の音楽がノリノリで大好きだったり。もちろん前述の『E.T.』のスピルバーグと音楽担当ジョン・ウィリアムスのコンビの作品にも魅了され続け。『バットマン』は衝撃的でした。あのプリンスの曲が僕に与えた影響は大きかったです。映画が好きなのに何故か俳優になりたいという方向ではなくそういうところで流れている様々なタイプの音楽を作りたいと思い始めたのです。

クラシックの様な荘厳な音楽が流れた次にはロックが流れたり、そうかと思うと誰もが好きになる様な綺麗なメロディーの曲が流れたり、そしてダンスミュージックが流れたり。きっと映画音楽の持つ多種多様性にも興味があったのだと思います。もちろん映画にもよりますが、ただそんな雰囲気が僕にはしっくり来たのでしょう。たまたま僕の母が音楽の教員ということもあったので聞いた所、クラシックの様な音楽を作りたいならそれなりにちゃんと作曲を勉強する所に行かないとダメだろうという話を聞かされ作曲の勉強を習いに行き始めたのです。

冒頭でJazztronikの音楽のコンセプトについて触れましたが、「自分の好きな音楽を全部混ぜ合わせたら」と言う音楽の中に“映画音楽”も当然含まれています。その他にはJazz,Funk,Dancemusic,Brasil,Latin,Pops等の音楽が書いてあったと思います。ある程度そういった音楽の要素は取り込んでやって来れたと思っています、が、実は映画音楽という要素を取り込むという事に関しては未だ踏み込めないでいました。理由はいくつかあるのですが1番は僕の技術不足ではないかなと思ってます。頭の中ではイメージ出来ていてもそれをどうやったら確実に音にして再現出来るかわからない。これが一番大きかったと思います。さらに“映画音楽”というテーマが僕にとってはとても大きなテーマだったからと言う事もあると思います。

何故今回そこへ踏み込んだのか。それには大きな理由があります。僕の作った曲だからといって僕が全ての音を奏でられる訳ではありません。僕の書いた楽譜を演奏してくれる代弁者が必ず必要なのです。幸いな事に僕はその代弁者となってくれる素晴らしい演奏家達に昔からとても恵まれています。素晴らしい演奏家というのは時に作った楽曲を僕の想像を超えてより一層完成度の高いものにしてくれます。特に今回の様な映画音楽を題材としたアルバムというのは僕からの細かい指示も多いので演奏家にもそれなりの表現力や技術といったものが要求されます。この数年は比較的同じミュージシャンと共にLiveやレコーディングをする事が多かったので僕の中でそのミュージシャン達による演奏がどんなものになるのかという事がイメージしやすかったという事もあります。演奏家に恵まれたという事は今回のアルバムを作る事を僕に決意させた一番大きな要因だと思っています。

この『Cinematic』でJazztronikのコンセプトの最後のキーワードであった“映画音楽”という大きなテーマにチャレンジする事がやっと出来ました。正直言いますが、、決してJ-POPチャートに上がる様な内容ではありません!“七色”や“Lovetribe”の様な歌モノも収録されていません!ですがこれが僕が初めにやってみたかった音楽である事は間違いないです。そして僕位の世代の人間がこういう音楽をどんどんやっていくべきなのではないかなと思っています。是非この『Cinematic』を聞いて頂いてJazztronikの音楽の最後の一面を知ってもらえたらと思います。

『Cinematic』のダイジェスト版がこちらで試聴出来ます。まだ聞いた事の無い方は是非聞いてみて下さい!https://soundcloud.com/jazztronik/digest-of-cinematic

 

そして今月末から始まる『Cinematic』tour(福岡、大阪、名古屋、東京)に是非いらして下さい!

6/29 福岡スカラエスパシオ
http://bit.ly/1oqTsVH

6/30 ビルボード大阪
http://bit.ly/1oqYotU

7/1 名古屋ブルーノート
http://bit.ly/1oqYCkG

7/2 ビルボード東京
http://bit.ly/1oqYLVb